陰陽連絡を制する者が完乗を制す 三日目
2008年8月13日 今日こそ陰陽連絡

 ムーンライト九州の指定席は新大阪からとっていたが大阪から乗車(旅客乗車規則的にこの事例がセーフなのかは知らない)すると、自分の席(窓際)の隣にいわゆるヤマンバギャル(死語)が座っていた。見事に「きめえよこいつ」みたいな目線をぶつけてくる。でももう慣れた。

下関5:38―(山陰本線)―7:45長門市7:50―(山陰本線)―7:53仙崎8:00―(美祢線)―9:24厚狭10:04―(山陽本線)―10:38新山口11:26―(山口線)―13:45益田14:55―(山陰本線)―15:47浜田15:50―(山陰本線)―16:19江津16:26―(三江線)―18:16浜原18:31―(三江線)―20:14三次20:33―(福塩線)―22:13府中22:15―(福塩線)―22:57福山23:15―(山陽本線)―0:15岡山0:25―(ムーンライト九州)―5:06厚狭

 ムーンライト九州号なのに九州を目前にして降りるという狂気。って春にもやった気がする。

 おはようございます。時刻は5時34分、なんと「朝ズバッ」総合司会者の、みのもんたは仕事を始めている。


 ここからムーンライト九州は機関車付け替えのため12分停車するのでわたくしがこれから乗る山陰本線の列車の方が先に出発する。

 四分乗り換えをダッシュでこなし、黄色いディーゼルカーに乗り込む。

 山陰本線は日本一長い鉄道路線だということはほとんど知られていないような気がするのは、全線通して運転する列車が存在しないからだと思われる。この路線では、特急列車ですら二両編成で走っている。

 たまには乗り鉄らしく景色を見るかということで海の方を見ると…ここは良くも悪くも田舎である。


 海まで視界を遮るものがない。

 いまどき何故か線路よりも海側に高速道路が出来るという現象が各地で起こっていて鉄道ファンとしてはガソリン税の無駄遣いの産物に景観を破壊されるのでとっても不愉快なのだが、山陰には高速道路はほとんどないのである。


「この列車、昨日の大雨により、少々遅れて運転しております」

 昨日、雨なんて降りましたっけ?(昨日はこんなとこいなかったんだから当たり前だ)

 昨日の雨で止まるとはさすがローカルだぜと思いながら、駅での異常な停車時間に少し焦っていた。

「この列車、当駅で行き違う予定の対向列車遅れのため、4分遅れております」

 えーっと…長門市での乗り換え時間は5分しかないんですけど…

「対向列車遅れのため、10分遅れて運転しております」

 …長門市―仙崎の盲腸線はあきらめろとおっしゃるか?

「次は長門市、仙崎行きは7時53分、0番線…」

 長門市には10分遅れで到着した。7:55。仙崎行きの発車時刻は7:53なのでどう見ても間に合わないなと思ったので改札に行こうとすると…

「仙崎行きご利用のお客様は切り欠きホームの0番線にお急ぎください」

 ふと0番線を見ると単行の列車が止まっていた。どうやら発車を待っていたようだ。地方ではよくあること。そういえば以前中央線が大雪で遅れたのを小海線の列車が23分待っていた(で、なぜか終点小諸に着くときには定時)という伝説があった。

 3分間住宅街を走ったら仙崎到着。仙崎は見事に無人である。なんでこの1区間のために支線があるのか、誰か教えてほしい。

 で、折り返して長門市で増結して美祢線に直通する列車になるのだが、長門市からすごい乗客が乗り込んできた。もちろん人数的な意味ではなく。

魚の行商人。

 どでかい和風なカバン(籠ってやつか?)を担いで車内にブルーシートを敷いて、魚を広げ始めた。言っちゃ悪いが、魚臭い(当たり前だ)。地元民が長門市で隣の車両に逃避した理由がわかった気がする。

 路線図を見ればわかるが、美祢線はすさまじい山奥を走行している。乗客なんてそんないないから地方交通線なんだろう…と思ったら実は幹線なのである。(※地方交通線は時刻表の地図で青色になっている路線、幹線は黒色で書いてあり、それぞれ運賃体系が違う)あの秋田新幹線が走っている田沢湖線や、青函トンネルのある海峡線でさえも地方交通線に指定されているのになんとこの普通列車しか通らない路線が幹線らしい。

 何故こうなったかというと、「国鉄時代に決めてそのまんまだから」。JRのやる気のなさがあふれ出ている。大体そのまんまだから、予讃線特急が内子線を経由するときに予讃線が幹線なのに対して内子線が地方交通線だから運賃計算が(以下略)。

 山と田んぼしか見当たらないなと思っていたら厚狭到着。春に来た時は新幹線の乗り換え駅のくせに何にもない駅だと思ったがやっぱり何もなかった(おい)。

 山陽本線に乗って、小郡(おごおり)改め新山口(いったい何年前の話だ)からSLやまぐちで有名な山口線に乗る。ちなみにさっき美祢線が幹線という話をしたが、山口県の代表駅たる山口駅を通過するのに山口線は地方交通線である。

 新山口でふぐ天そばの誘惑に駆られたが、山口名物をあえて無視することに乗りつぶしの醍醐味を感じていたため、無視したら昼飯がじゃがりこになりました(ま た か)。

 新山口から山口まで途中一駅にしか止まらないがそこから各駅停車という快速「やまぐちライナー」(という愛称がついているが、一両編成)で益田に行く。


 山口駅は山口県の代表駅であるはずなのに、山陽本線が通ってくれなかったため、山の中の普通の駅くらいのレベルになり下がっているそうだ。駅前のデパートが潰れ、駅弁屋が撤退した岐阜駅よりも悲惨である。

 一両編成なせいで、朝のラッシュとはいかないまでも地方ローカル線とは思えないほどのすさまじい混雑である。増結しろよJR西日本…。

 山口駅に着く前に沿線風景はすでに山の中といった感じである。新山口から山口までひと駅しか止まらないとさっき述べたが、途中駅の名前は湯田温泉という。山口に着く前にすでに山奥の秘湯に来た気分である。なお、この列車は益田まで直通なので山口駅の何もなさを堪能しようということはできない。非常に残念である。

 立ち客が出過ぎ津和野まで座れないというありさまである。なお、途中にある「長門峡」駅は「ながときょう」ではなく「ちょうもんきょう」と読むそうだ。昔、某アニメの長門とか言うキャラクターが好きな人物が「長門●●ってつく駅のなかで『ながときょう』駅だけ変換できない」と言っていたので念のため。

 津和野についたら反対側のホームに新山口駅の時点で一時間先に発車したはずのSLやまぐち号がいた。どうやら追いついたようである。おそらく山口駅より多いであろう人数が降りてSLからの乗り継ぎと思われる乗客がたくさん乗って来た。でもやっぱり一両編成である。地方交通線とは思えない大混雑。毎日の通学で鍛えてるとほかの客が降りた瞬間にその席にかけつけて座るなんてことも可能ですが、なんとかしてくださいよJR西日本。


 列車は終点の益田に到着した。

 時刻は13時45分、いい加減昼食をとりたいものである。

 一応山陰本線の主要駅なので、駅そばくらいあるだろうと駅構内を探すが…そんなものはない。というかそもそも探すほど駅構内が広くない。あるのはキオスクとみどりの窓口のみ。そして駅弁すらないらしい。「地方の活力」ってやつを感じたぜ…!

 仕方がないので駅の外に出たら餃子の王将があった。が。福知山での恨み、晴らさずおくべきか…などと意味のわからないことを考え始めた私は、Googleでコンビニを探し始めた。いやあ、便利な時代ですな。

 駅構内にまともな設備がないから駅前にも期待していなかったが、Google先生によると、「ポプラ益田駅通店」というのが徒歩二分くらいのところにあるらしい。ほーほー、とか思ったが、ところで「ポプラ」ってのはコンビニなのか?地元にそんな名前の店はない。

 さまざまな疑念を持ちながらそのコンビニっぽい何かに向かうと、そこにはやっぱりコンビニらしき外観の店があった。やっぱりコンビニらしい。

 そして中にはいわゆる普通のコンビニ弁当らしき弁当も売っていたし菓子パンもおにぎりもあった。やっぱりコンビニだった。

 冷やしうどんというコンビニの定番メニューを購入して駅に戻る。

 地方の駅では入ったところに椅子があって、駅舎全体が待合室みたいな状態になっていることが多い。というわけで待合室でそのうどんを食べる。普通だ。やっぱり普通のコンビニだったらしい。


 ぶっちゃけ今日はこれからが本番。陰陽連絡には、何を考えて作ったのかわからないような路線がたくさんあるが、その一角を構成する三江線と福塩線に今日は乗る予定なのである。

 浜田ブリトニー行きの普通列車(一両編成)に乗って、浜田まで行く。この先は、山陰本線の普通列車にしては珍しく接続がよく、三分後にその先に向かう列車が来た。これはすごい。

 三江線の起点こと江津ではこれまたたまたま接続がよく、7分後に列車が来るらしい。いや、都心で七分も待たされたらたまったもんじゃないけど。山陰本線で普通列車同士の乗り継ぎをしようとすると三時間待たされるなんていうのはごく普通のことですからね…

←さっきの写真とあまり変わらない…

 列車は江の川に沿って走る…というよりはゆっくり動く。周りには山と江の川しか見えない。車内は途中から同業者のみ。列車が一日に数本しかないような田舎でも通学する人はいるらしい。一時間に二十本以上やってくる満員電車で毎日学校まで向かうわれわれとは大違い。

 右側は崖、左側は川、しかないような状況なのだが外を見ると…

 降りしきる大雨。

 えーっと、これで何かの間違いで、がけ崩れして列車が流されたりとか(竜ヶ水駅じゃねえんだから…)、そうはいかなくとも行き止まりになったりとかになった場合、本当に何もない山奥で一晩過ごす羽目になりそうなものである。ああこわい。

 …とか思っていたら一時間もせずに止んでしまった。ゲリラ豪雨怖い。というよりは「山の天気は変わりやすい」っていう古人の言葉は本当だったんですね。

 さて、終点の浜原駅は…名前に「浜」と付いてるわりに、かなりの山奥である。三江線の運行形態を分ける重要な駅なので、山奥なりに何かはあるかもしれないと思ったのだが…

本当に何もない。

 駅前には商店らしき建物が一つだけ。こんなところに店作って誰が利用するのさ。

 十五分乗換(この路線では恐らく最も接続がいいパターン)ですら暇を持て余すくらい何もない。そして時刻表によれば、三次方面の列車がは四本しかないようだ。

 またもやキハ120かよ…。三次方面から列車がやってきて、想像を絶する程の数の乗客が降りて行った。たぶんこの列車がそのまま折り返すのであろう。というわけで乗り込む。

 列車はさっきとまったく変わらず、同業者のみで出発する。ああもう。そんでもってこれだけ沢山同業者がいても全く会話が生じないのが不思議である。と、対人恐怖症気味の私が言っても説得力がないのだが。

←ものすごい高い所にあることで有名な宇都井駅・残念ながら列車からだとその素晴らしさは表現できない

 さて車内にはどこからか乗ってきた女子高生一人(制服着用)。いったいこんな山奥からどこの高校に通っているんだろうか。

 
「ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!」

 いったいこんな山奥でこの運転士は何を考えて警笛を鳴らしたのであろうか。

 三次に到着したころにはすでに真っ暗であった。 お先真っ暗。

 これから先に福塩線なる路線が残っている。こんな真夜中に乗りつぶしして何がおもしろいのか、と思われるかもしれないが、乗ること自体に意味がある。と思いたい。

 こんな果てしない山奥で、20時過ぎていたら普通はもう窓口を閉鎖しているような気がしたのだが、何とスタンプを押すことができた。不思議。

 福塩線の名前のもとになった塩町駅は(山奥なのに塩…)現在無人駅らしい。そして三次からこの列車は途中の府中駅までしか行かない。

 広島県には府中市と府中町があって、府中町は広島市の中に何故か孤立して存在する、バチカン市国みたいな自治体で、府中市は山の中にある市で、この「府中」は当然山の中に存在するので府中市。でも府中「市」なのに府中「町」より人口が少ないらしい…。

 だめだこいつ早く何とかしないとと思いつつ、2分乗換をこなす。どうせなら直通してくれよ。


 と思ったら、ここから電化区間なのか電車が待っていた。なるほど。

 105系などという関東では絶対に見ないであろう列車が、国鉄時代を忘れさせようとしているような派手な色で佇んでいた。しかし、電化しているとは言え、結局ワンマンカーなのは変わりない。

 福山から山陽本線で岡山に向かうことになっているが、そういえば未だに夕食を調達していないことに気がついた。でも、さすがに山陽側に出たとは言え、もうこんな夜中にキオスクとか駅弁屋とかが営業しているはずがない。ああ、とうとう夕食抜きか。

 福山では当然、夕食にありつけず、岡山の10分しかない乗り換え時間にかけようと思い、改札階にあるコンビニ(そういえば春にもここに来たな)が営業していないかと思ってみたら、営業時間は23時30分までらしいので開いていなかった。

 そして、ムーンライト九州がやってきた。当然ながら全車指定なので自分の席に向かうと…


 状況が理解できるだろうか。図の右下が私の座席である。そう、前の席に座っていたおっさんが座席をフルに倒し、しかも通路側の席に人が座っているのだ。夜行列車に途中駅から乗るとこういうことが起きるのだ。しかももう0時、双方寝ているのでどうしようもない。座席をフルに倒されても一応座ることはできるが、荷物は置けない。荷物棚も通路側の人の荷物らしきものが置いてあったので、通路にキャリーバックを放置して寝ることに。ああ、置き引きが心配だ。

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